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POWER PUSH! 2011年4月のアーティスト
少年であれ / 高橋優

少年であれ / 高橋優

アーティスト

プロフィール

1983年12月26日生まれ。27歳。秋田県横手市出身。
札幌の大学への進学と同時に路上での弾き語りを始める。
2007年5月 自主制作アルバム「無言の暴力」を500枚限定で販売。完売。
札幌のインディーズチャート3週連続1位。
2008年 活動の拠点を東京に。
2009年7月 初の全国流通盤「僕らの平成ロックンロール」発売。
2010年7月21日「素晴らしき日常」<SPACE SHOWER TV it!楽曲>でメジャーデビュー。
2010年11月10日セカンドシングル「ほんとのきもち」発売 。
2011年2月23日サードシングル「福笑い」<SPACE SHOWER TV it!楽曲>発売。

Power Push! Interview

高橋 優

昨年7月シングル「素晴らしき日常」でメジャー・デビューを果たした高橋 優。路上ライヴからスタートした彼の歌は、どれもすごく近い。誰もが見える風景、味わう喜怒哀楽、伝えたくても伝えられなかったこと。その先を唄っている。“とにかく旬なものを唄いたいんです”と彼は言う。メジャー・ファースト・アルバムに冠した『リアルタイム・シンガーソングライター』というタイトルは、まさに彼自身をそのまま表している。今月のPower Push!は、本作から配信限定でシングル・カットされる「少年であれ」が選ばれた。高橋 優が『リアルタイム・シンガーソングライター』たりえる理由を明らかにするインタビューになったと思う。

3月11日の東日本大震災が起こったときはどういう状況でしたか?

高橋:地元の秋田にいました。震度6弱の揺れでしたね。駅について、友だちに車で迎えにきてもらって。とりあえず一緒に昼飯を食おうってなって、お金を下ろすためにATMにカードを入れた瞬間に揺れ出して。立てないくらい揺れましたね。家族の安否確認をしようと思ったんですけど、携帯も不通になっていて。なので、車で直接友だちの親と自分の親に会いに行ったんです。信号も全部止まっているような状態だったんですけど。

東京に戻れたのは?

高橋:2日後ですね。飛行機がようやく動き出して。

それから自分と音楽についてもいろいろ考えたと思うんですけど、今はどういう思いがありますか。

高橋:考えた結果、何も変わらなかったですね。いままでどおりのことをやらなきゃいけないと思ったというか。いままで唄ってきた歌の内容にも自分でブレを感じることがまったくなかったので。ちょっとズレた話になるかもしれないですけど、被災された地域の方々だけに向けて唄うのも変だなと思ったんですよ。直接的には被災していなくても、被災地にいる人たちに何かできないかと思って悩んでる人たちもいて。そうかと思えば、今このタイミングで離婚して絶望の淵に立たされている人もいるかもしれない。受験に受かった人もいれば、落ちた人もいる。僕の歌を聴いてくれる人を僕が選んじゃいけないと思ったんです。この歌をこの人のためだけに唄います、みたいなことはいままでもやってこなかったし、これからもやりたくなくて。でも、共通言語としてみんなに笑顔になってほしいという気持ちは常にもってます。それがどれだけ困難だと言われても僕は唄います。すぐ笑える人たちにも同じように唄います。

今、高橋くん自身が今言ってくれた言葉が、高橋 優の歌がどういうものであるかを明瞭に示してくれたと思います。で、この『リアルタイム・シンガーソングライター』というアルバムもまさにそういう作品で。完成してどういう実感がありますか。

高橋:個人的には、アルバムとしてストーリー性があるものを作りたいという思いもあったんですけど、このアルバムはこれをもって高橋 優だと思っていただきたいというか。これが高橋 優の代表曲です、という曲が11曲そろいましたね。

確かにそういう連なりですね。

高橋:だからストーリー性という意味では次回作への課題でもあるなと思うんですけど。でも、今いちばん届けたいものを凝縮したアルバムになりましたね。1曲1曲、丹誠を込めて、妥協することなく作れたので。

なぜそういう曲ばかりが生まれたんだと思いますか?

高橋:やっぱり、もともとそういう曲ばかり作ってきたからだと思うんですよね。

メジャー・デビュー以降、自分の歌の核心がどんどん定まっていったという思いはある?

高橋:核心はまだ全然見えてないんですけど。メジャー・デビュー以降は、聴いてくれる人がいるというあたりまえの感覚を確かめる時間でしたね。それを感じられることって、あたりまえのようで全然あたりまえじゃなくて。

高橋くんは路上で唄っていた経験も長いしね。

高橋:そうなんです。路上ライヴを6年くらいやっていたから。その半分くらいは人のいないところで唄っていて。ひとりでも聴いてくれる人がいたら、その人に全力で届けるんです。ひとりの人に向かって“これは新曲です、昨日作ったばかりの曲です!”ってやり続けてきた僕からすると、今もどこかで自分の歌を聴いてくれている人がいるかもしれないと思えることはすごく大きくて。メジャー・デビューしてからそれを感じられる機会が多くなりましたね。

高橋くんの歌はすごく近いですよね。バンド・サウンドが鳴っていても、弾き語りで目の前で唄われているような感覚があって。

高橋:自分の歌が上からにならないようにしたいという思いが常にあって。でも、下からになるのも変だなと思うんです。だから、いちばんベストなのは、仲のいい友だちとか、恋人とか、家族でもいいんですけど--“ギターを弾くようになって曲ができちゃったんだよね。ちょっと聴いてくれない?”って言って、自分の部屋に誰かを招き入れるような距離感というか。その人を自分の目の前に座ってもらって唄うことが、ベストな環境のライヴだと思っているんです。常にそれをやりたい。音楽をやってる人は誰もがそういう瞬間ってあったと思うんです。

近しい人に“こんなこと唄うんだ?”って思われたりしてね。

高橋:そういう近しい人だからこそ“もっとこうしたらいいんじゃない?”っていう意見ももらえたりするじゃないですか。そういう関係性をリスナーと僕で築き上げたいなって。例えばこれから何万人も入る会場で唄えるようになったとしてもそうありたいです。自分のライヴでは“友だちに連れてこられたけど、つまんないな”って思って帰る人がいたらすごく哀しいんです。僕、そういう人なんですよ(笑)。

そういう人だと思ってましたよ(笑)。

高橋:はい(笑)。そのためにもっと練習しないといけないし、もっとその思いを曲に込めないと、って思ってます。

高橋くんの歌はずっと“今”に焦点が当たっていますよね。それはなぜですか?

高橋:今を唄うというのは、今の自分がいちばん旬なものしか唄いたくないという願望があるんですよね。

旬なものを唄うことで、リスナーにどんな影響を及ぼすと思いますか?

高橋:リスナーに影響を及ぼせるかはまだわからないですけど、リスナーがいる以上は自分に胸を張っていたいんです。自信のないことを唄って“変なステージをしてゴメンないさい”ってやっちゃいけないと思うから。“これを今いちばん聴いてもらいたいんだよ!”って胸を張って言えるかどうかがまず大事だと思っていて。そこが最初の勝負というか。

常に上からでも下からでもない真ん中の視点で今を唄う、それを維持するのはかなり難儀なことでもあるとも思うんです。

高橋:確かに意識した途端それができなくなることもあるんですよね。けっこうそこは怖くて。自分が気づいたときに全然違う人間になってるんじゃないか、全然違う価値観で生きちゃってるんじゃないかって不安になることもあるんですけど。ひとつ実践しているのは寝る前や朝起きたときに、自分が楽しかったことを思い出すんです。

思い出す?

高橋:一切の現状を一旦遮断して、あのときのあの出来事が楽しかったなって思い出すんです。自分のなかでワクワクしたこと、楽しかったこと。それを自分のなかでセーブしておく。それがわからなくなったら終わりだと思うんですよね。自分という人間が、何を楽しいと思うかわからなくなる状態がいちばん怖いと思っていて。何が楽しいかわかったら、何が哀しいかも見えてくるじゃないですか。そういういちばんシンプルな気持ちを大事にしてます。たまに酒に飲まれて負けることもあるんですけど(笑)。

高橋くんの歌は、どれもストレートに迫ってくるけど、答えを提示しないですよね。だからこそ、どれもリスナーに想像しろ、感性を麻痺させるな、って訴えかえているように思う。

高橋:こういうことを言うと、下から言ってるように受け取られるかもしれないですけど、リスナーの方々というのは僕より偉い気がするんです。

どういう部分で?

高橋:いや、すべての面において(笑)。僕以外の人は誰もが僕より優れてるって気持ちがどっかにあるんです。それはそれで偏見だと思うんですけど。もう、癖ですね。

それはある種の防衛本能なのかもね。

高橋:それもあると思います。それもあって、自分が言わせてもらえることなんか何もないような気がする、というのが常に心のどこかにあって。“おまえの意見なんて誰も聞いてねえよ”みたいな。だから、“この考えはみんなと共有できませんか?”というところではじめて自分が語れる気がするんです。

提案するという感覚?

高橋:提案ですね。そこにそっと自分の気持ちを置くことがスタートという気がする。

でも、高橋くんの歌は、提案だとしてもすごく強いですよね。

高橋:そのなかで答えを言い切ってしまわないようにするというか。例えば「福笑い」という曲でいえば、“笑え!”っていう歌になったら僕のなかでは大失敗で。“どんな偉いやつがそんなこと言えるんだよ”って気持ちに自分でなっちゃう。“笑うことも何かのヒントになるんじゃないですかね?”っていうところまでしか僕には言えない。でも、そこで終わる気もなくて。そういう意味では「希望の歌」という曲はけっこう言い切ってますね。

ああ、そうですね。

高橋:“希望は絶対にある!”つて。これは、こういう歌があってほしいという自分の願いでもあって。自分のメッセージというよりは。こういう歌があった、それをたまたま作ったのが自分だったということにして唄わせてもらえないだろうか?という感じで。それくらい僕は希望というものに対して強い思いがあるんですよね。

「希望の歌」は、その強い思いが出ていますね、確かに。

高橋:今の日本の現状を見て“希望はない”って言われているような気がしたんですね。“あなたは要りません”とか“あなたがやってきたことは全部ムダです”って。テレビを観ていてもそうで。“はい、殺人事件が起こりました”、“そういう時代です”みたいな。その感じをすごく肌で感じて恐怖を覚えたんですよね。その真逆を唄ってやろうと思って。“絶対に希望はある”、“光はある”、“僕らが生きていることは絶対に意味がある”って。これは、去年だったら唄えなかった。メジャー・デビューして、「素晴らしき日常」に対するリアクションがあったり、「福笑い」を去年1年通して唄ったんですけど、ライヴのなかで聴いてくれた方々の表情を見ていたらチャレンジしようと思えたんです。

こうやって話を聞いていても思うんですけど、誤解を恐れずにいえば、高橋くんって、音楽に選ばれた人ではないと思うんです。自分で音楽を選んだ人だと思っていて。そういう人だからこそ鳴らせる何かを、自問自答を繰り返しながら追いかけてる。その生き様を、歌で示していると思うんです。

高橋:そう言われてすごくしっくりきますね。音楽が女性だったら、僕はずっと片想いしていると思うんです。告白し続けている。もう、10年くらい。路上ライヴからはじまって、“この曲はどうですか?”っていろんなタイプの曲を作って、いろんな唄い方をして。でも、振り向いてもらえなくて。そのなかで自分が気持ちよく唄えた瞬間があると脈有りかなと思えたりする。メジャー・デビューしたところでようやく“じゃあ遊んでもいいよ”って言われたような気がするくらいですね(笑)。それでも自分のなかで音楽へのアプローチは何も変わってなくて。まだ振り向いてもらってないと思ってますから。“まだあいつのこと好きなんだ”、“なんで俺は選ばれないんだろう?”って思うことはずっとあって。でも、自分のなかで納得できる曲ができたときに“やった!”と思える瞬間も間違いなくあるから。その喜びがほしくてこれからも唄っていくんだと思います。

そして、『リアルタイム・シンガーソングライター』から、最後に収録されている「少年であれ」が配信限定シングルとしてリリースされ、さらに今月のPower Push!に選ばれました。

高橋:ありがとうございます。スペシャってオシャレなイメージがあったから、自分は選んでもらえないだろうなと勝手に思っていました(笑)。スペシャのPower Push!は憧れのひとつでしたね。

この曲で高橋くんはギターを弾いていないんですよね。ピアノとチェロの二重奏で。歌詞は父性のような視点が感じられるんだけど、自分自身にも唄っているような趣があって。どのように生まれた曲ですか?

高橋:去年できた曲なんですけど。メロディがずっとあって、歌詞は書いたり削ったりを繰り返していましたね。“僕らはこういうふうに歩んでいこう”って誰かに言いたかった。自分が何かを悟って、“おまえらもこれからがんばって歩き出せよ”みたいな曲には絶対にしたくなくて。半分はおっしゃるとおり、僕自身に向けて唄っていますね。歌詞の書き方の手法としてはインディーズ時代の「こどものうた」に似ていて。あの曲は暴力母さんやセクハラ教師が出てきて、なかばその存在を悪と決め込んで“あいつらなんか”っていう気持ちでまずひとつ線を大きく引いているんですけど。線を引くことで反抗するというか。でも、いろんな曲を作っていくなかで、自分も加害者になり得るし、人としてどっちが悪か正義かなんて言い切れないって感じる機会がすごくたくさんあって。

事実って多面的なんですよね。

高橋:そうなんですよね。でも、「少年であれ」はあえて“やっぱりそういう存在はいる”って線を引いたんです。自分の存在を必要ないと言ってくるやつらがどこかにいると。自分の存在理由について悶々とするのって、年齢は関係ないと思うんです。僕と同世代でも、年上の方でもそういう悩みをもっている人はいて。

そうだと思います。

高橋:実際僕がこの曲を作ったのも25歳のときですから。25でも少年でありたいと思ってるってことなんですよ。もしかしたら35、45になってもそう思っているかもしれないって感じたときに曲にする価値があると思ったんです。

加害者の線をまた引くというのはすごく勇気が要ったんじゃないですか?

高橋:そうですね。でも、「希望の歌」もそうですけど、振り切ることも大事だと思ったんです。振り切って、ひとつの歌として成立させたかった。“作詞作曲:高橋 優”っていうクレジットが入ってなくてもいいと思えるくらい。こういう歌が聴こえてきてほしい、こういう歌がお店に入ったときに流れてきたらいいなっていう自分の願いみたいなものも曲作りのなかに盛り込んでいて。

高橋 優=アコースティックギターというイメージをもっている人も多いと思うんですよね。高橋くんのもつギターは時に武器のようにも見えることがあって。それを外したという驚きもあったんですけど。

高橋:僕は、最終的にどんな形であれ歌を届けられればいいと思っているところがあって。どうしてもギターが必要だったからいままでギターを弾いてきましたけど、この曲のメッセージはバンドのほうが合うなと思ったらバンドにするし、ピアノだけでいいなと思ったらピアノだけでよくて。ギターにどうしてもこだわりたいということでもないんですよね。でも、この曲をギターで弾き語りしたくなるときもあるんですよね。なので、ラジオで唄うときなどは弾き語りをすることもあると思います。

ミュージック・ビデオ(以下MV)はすごくシンプルな仕上がりですが、高橋くん的な見どころは?

高橋:いままで作ってきた僕の映像作品のなかで最多人数が出演していることですね。

3人だけど、最多人数(笑)。

高橋:いままでは僕ひとりでしたから(笑)。あと、今回は桜も登場するという(笑)。映像作品を作るときはいつもプロデューサーの箭内道彦さんからの提案があって、資料を見せてもらうことからはじまるんですけど。今の段階では、どの曲のMVも高橋 優を知ってもらうきっかけになることを意識して制作してますね。「少年であれ」のMVは特に歌を聴いてもらいたいし、字幕の歌詞を読んでもらいたいし、どんなやつが唄っているのか確かめてもらいたいという思いが強いですね。

高橋 優

text:三宅 正一  photo:後藤 淳

【特別企画】高橋 優がリアルタイムでハマっていること

高橋 優

以前流行った映画をあらためて観ることに突然ハマってます。最近は『アルマゲドン』、『インディペンデンス・デイ』、『グラディエーター』、『世界の中心で、愛をさけぶ』などを観ましたね。もともと映画を観ることが大好きで、映画館でバイトした経験もあるんです。個人的に映画をつまらない、おもしろいだけで判断するのがヤで。監督が意図したところをちゃんとつかみたいんです。ちゃんと感動したいというか。そのほうが1800円払う価値があると思うんですよね。だから、僕のなかで映画を観たときに監督の意図がわからなかったら、僕のほうの大失敗になるんです。

番組情報

POWER PUSH!

POWER PUSH!

毎月注目アーティストの一曲をピックアップし、
そのミュージックビデオをヘビーローテーションでオンエア!
2011年4月のパワープッシュアーティストは…

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