スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2023
開催直前座談会

若手バンドの登竜門として長年歴史を紡いできた『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR』。

今年全国5箇所でしのぎを削るのはカネヨリマサル、帝国喫茶、プッシュプルポット、yutoriの4組。ツアーを目前に控えた今、彼らの心境をお聞きしました。

ちとせみな・いしはらめい(カネヨリマサル)　杉浦祐輝・疋田耀(帝国喫茶)　山口大貴・明神竜太郎(プッシュプルポット)　佐藤古都子・浦山蓮(yutori)

──今年の『列伝ツアー』、いずれも聴かせる力もロックのダイナミズムも感じさせる4組が揃った印象を受けました。まずは、それぞれのバンドがどこを強みと自覚して、何を信条として活動しているのかから、聞かせていただけますか？

プッシュプルポット・山口大貴：僕たちは大っきい声を出せるバンドですね（笑）。大っきい声を出して、お客さんも巻き込みつつ楽しめるバンドかなと思ってます。

明神竜太郎：お客さんと一緒にウワーッとなれる、盛り上げ番長みたいなことをバンドとしてやりたいと思ってますね。

山口：特攻隊長です。

帝国喫茶・杉浦祐輝：僕らは「これ！」みたいなのがあんまり無くて。アルバムの中でもジャンルも色々あるし、メンバー4人のうち3人が曲書いてるのもあって、色々やるというか。オルタナティヴな感じです。

カネヨリマサル・ちとせみな：自分達は本当のことをちゃんと歌にするというのを決めていて。背伸びをしない、自分達の出せる等身大の音楽を作るというのを決めてます。

──「本当のこと」というのは「嘘がない」という意味で良いですか？

ちとせ：そうです。全部自分の言葉と気持ちで事実を書くって。ライブも、自分達の音楽が一番良い形に真っ直ぐ伝わるようにストレートにやりたいなって。

いしはら：自分達で言うのもおかしいですけど、生き方然り、何にしても不器用なんで。けど、音楽がめちゃくちゃ好きっていう。聴いてくれる人に自分達の音楽が伝わって、キラキラした顔で観てくれるのが、自分達の力やなって思うんで。そういう対話みたいなのができてるのがカネヨリマサルっぽいなって思います。

yutori・浦山蓮：うちは（佐藤）古都子が中性的と言うか、男の子っぽくもあって女の子っぽくもあるのが強みだと思ってるので、男目線の歌詞も歌えれば女目線の歌詞も歌えるし、生活に寄り添う歌詞もラブソングも歌えるのが強みだと思います。

──古都子さん、ライブ面ではどんな意識で？

佐藤：えっ......！

浦山：......ライブはそれこそまだ──

山口：通訳？（笑）

浦山：（佐藤は）ど緊張してるんで（笑）。ライブはまだやり始めたばかりで手探りなんです。自分の好きなアーティストを観に行ったときには、アーティストが楽しそうに演奏してると楽しいなって思うので、そこはモットーというか、一番心がけているかもしれないです。

──この『列伝ツアー』に登場するということは、みなさんがここ数年でどんどんリスナーを惹きつけてきた存在であるという証でもあるわけですが、今年に入るくらいまではライブシーンにもさまざまな制限があった期間でした。そことはどんなふうに向き合ってきました？

山口：僕たちは勢い任せでやっていて......まあ今もそうっちゃそうなんですけど、コロナ期間中で（お客さんが）声出しとかできない中で、ちゃんと歌ったりちゃんと演奏したりとか、バラードも最後まで歌い上げたりとかして。そうやってきたことが、今声出しとかできるようになったときに、みんなが曲を覚えてくれたりして身を結んだ感じというか。コロナ期間だからって不満は無くて、お客さんの反応はないけどどうワクワクさせるか？とか、良い勉強になったので、それが今に活きてると思います。

明神：どうやって「お客さん楽しんでるな」を受け取って、テンションを上げてやれるかを、めちゃくちゃ考えていました。慣れてくる中でお客さんの顔を見れるようになって、意外とマスクしとっても笑顔ってわかるなとか、手がこっち側に向いてるとか、そういうのでテンション上げてやってましたね。

山口：お客さんを楽しませるのが一番かなと思っていて。そうすれば俺らも自然と楽しいので。カッコいいライブをしたいとも思ってたんですけど、今はお客さんを楽しませることを全力でやってればカッコいいかなって思ってるので。そこは大事にしてます。

ちとせ：わたし達は2019年の秋くらいにCDデビューして、2020年からコロナだったので、自分達を知ってるお客さんの前でライブをするっていうのが、数ヶ月しか経験がなかった状態で。ガイドラインに沿ってできるライブをただ積み重ねてきたみたいな感覚です。ライブができない時期もあったんですけど、音源は作り続けて、配信やサブスクとか、ライブ以外でもいろんなところで音楽と触れ合える活動をしてきたので、今この場におるのかなっていう自覚はあります。

──触れ合える動きという意味では、始動自体がコロナ禍が始まって以降なのが帝国喫茶とyutoriですよね。結成当初からあまり自由には動けなかったであろう2組は、まずはどうやって動いていこうとか、考えていましたか。

杉浦：......なんにも考えてなかったです（笑）。

疋田耀：マジで何も考えてなかったですね。

杉浦：はじめはお客さんもいなかったので、距離を空けるとかも関係ないし。

疋田：それ以前を知らんからね。とりあえず慣れて、声出しとかをいつか出来るようになったら良いかなぁくらいしか考えてなかったです。

──じゃあ逆に今新鮮というか。

杉浦：そうですねぇ。

疋田：声出せる、お客さん多い、楽しい。でも本当、それくらいしかないです。

浦山：うちはそもそもバンド組んだ時に古都子がギターを持ち始めたんで、楽器歴がバンド歴と一緒で。一番最初の音源をあげたときにライブの誘いは来たんですけど、弾けないから出れないってなって。だから、ここはしっかり一年、ライブの誘いが来てもお断りして基盤を固めよう、と。でもちゃんとリリースはしていきたいと思っていて、ライブの規制も強かったし、「ライブをやろう」というよりは、音源をいっぱい作ってライブもできるように準備をしていこう、みたいな感じでした。

──2023年に入って以降はまた状況が変わってきました。今、どんなことを感じています？

山口：ライブ、楽しいなぁって。

明神：声いっぱい聞こえるな、嬉しいなって。

ちとせ：めっちゃわかります。

──フェスとかに出る機会も増えたと思います。

いしはら：フェスにちゃんと出たのが今年からだし、お客さんとしてもそこまで行ったことがあるわけじゃなかったんで、実際に出るってなるとライブハウスの空気感とは全然違うんだなっていうのを、初めて痛感したというか。ライブハウスでも「どうやって盛り上げていこう？」とか考えていたんですけど、それともまた違う盛り上げ方をしないといけないんだなっていうのを、出て初めて経験しました。難しいんですけど、今年になって初めてフェスに来たっていう世代の方もいるんだろうなって思ったら、ほんまにお客さんと一緒に──

ちとせ：ライブを作っていくというか。

──なるほど。自分達のお客さん以外もいかに巻き込むかという点では、この『列伝ツアー』にも通じると思いますが、今回の4組はお互いにどんな印象を持っていますか？

山口：帝国喫茶は、年末に一回ライブで楽屋が一緒だったけど僕は喋ってなくて、名前はもちろん知っていたんですけど。なんか不思議な雰囲気があるなって。

ちとせ：うんうん。

山口：今も思ってるんですけど。

明神：そうね（笑）。

山口：独特な感じという印象がまずあって。カネヨリマサルは、Zeppのライブで一緒だったんですけど、そのときライブ終わった後に急に「ライブめっちゃ良かったです」みたいに話しかけてもらって。まさか声かけてもらえるなんて、俺、めちゃくちゃキョドっちゃって（笑）。曲もめちゃくちゃ良くて、お姉さんみたいな感じです。でも女の子だから俺たちみたいな野蛮な奴らは話しかけていいのかな？っていう印象があって。

──はい（笑）。

山口：yutoriは好きでいてくれてるっていうのは知ってるんですけど......そのわりにはあんまり来ないから（笑）。「俺たちのこと好きなんだろ!?」って俺らが行くのは気持ち悪いじゃないですか。なので待ってるんですけど......。

明神：蓮とはちょいちょい喋るんですけど、古都子が斜でこう......

山口：一生目を合わせてくれない（笑）。

──帝国喫茶から見た他3バンドは？

杉浦：みなさん初めましてなんで。僕らあんまり、仲良いバンドとか聞かれても答えられないから、ツアーを通してそうなれたら良いなって。印象とかは、年齢くらいしかあれなんで。

疋田：まだあんまり分かってないから、これからツアーを通して知れていけたら良いかなって思います。

──カネヨリマサルはどうでしょう。

ちとせ：プッシュのライブを見ると泣いちゃうくらい、MCが熱くて、大好きです。

いしはら：あとは楽屋でめっちゃ声が大きいイメージです。あ、良い意味で。

山口：苦情ですか？

いしはら：違います違います（笑）。プッシュがおるんやなっていうのがすぐ分かる。

ちとせ：帝国喫茶は、自転車乗りながら聴きたいなって思う。日常と一緒に聴きたい音楽だなと勝手に思ってます。でも対バンしたことなくて人間とかは知らないので、知っていきたいなと思います。

いしはら：（地元が）関西ですよね？

杉浦：はい。

いしはら：同じ関西なのでそこで仲良くなれたらなって。

ちとせ：yutoriは自分達より年下なんですけど、めっちゃ上手くて。尊敬もできるし、めっちゃ落ち着いてるなって、勝手に思ってました。イメージでは。

浦山：プッシュさんは、ライブめちゃくちゃ熱くてカッコいいけど、コードがAのaddとか使ったりオシャレだし、スネアもタイトに締まっていて聴きやすい印象です。帝国さんは、前に一度フェスで一緒のステージになって、そのときに初めてライブを観させてもらったんですけど、音源を聴いてる時とライブが全然違って。音源から想像してた感じでライブを観に行ったら......。

佐藤：カッコよくて、殺気を感じたというか。殺されるかと思った。

浦山：カネヨリさんは、LOFTの列伝で対バンした時に、MCがすごい真っ直ぐな、それこそさっき本当のことを歌にするっておっしゃってましたけど、その通りで、ライブを観ていると、音が鳴ってなくて言葉だけでもスッと入ってきて、「すげえ」と思いながら観てました。

──それでは最後に、ツアーへの意気込みや来てくれる方へのメッセージなどあれば。

山口：僕たちはまず3バンドと仲良くなりたいですし、初めて観てくれる人もいっぱいいると思うので、僕たちの人柄や音楽、良いところも悪いところも全部知っていってもらいたいなと思うし、アーティスト側もお客さんも、俺たちのことを知ってもらいたいなっていうのが第一にあります。

杉浦：ツアーが初めてなので、そこはどんな感じかな？って。対バンも珍しいので、初めて尽くしです。

疋田：初めて尽くしですけど、良い感じに楽しめたらいいかなって思ってます。

ちとせ：自分達も楽しんで回れたらなって。良いライブをひたすらにやれたらいいなって思ってるのと、あとは「今年の列伝よかったな」って思ってもらえるように、イベント自体も盛り上げれるように頑張りたいなと思ってます。

浦山：自分がバンドをやってない頃に、列伝のツアーファイナルでKOTORIさんとかズーカラデルさんの出た回（2021年）を観にいって、そこでKOTORIさんがめちゃくちゃカッコいいなっていう憧れと、絶対にいつか対バンしてやるぞっていう気持ちが芽生えたので。初めて観る人が多い中で、自分も誰かの憧れじゃないけど、バンドを始めたいっていう気持ちにさせることが5公演全てでできるよう頑張ります。

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