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Moonlight / Yo-Sea
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パレイドリア / 須田景凪
「大人はまだ知らない。」シャルルを生み出したボカロP“バルーン”がシンガーソングライター“須田景凪”として、全曲に生楽器を使って制作された1st EP「teeter」に収録の「パレイドリア」が、1月のPOWER PUSH!に選ばれた。速いテンポに凝縮された言葉たち、そして不思議な世界観を表現するミュージックビデオ。この曲に秘められた想いは一体何か。インタビューでは、今作のアルバム紹介に加え、ボーカロイドを駆使したバルーン名義の曲と、自身の声で歌う須田景凪名義の曲との違いやアートワークを手がけるアドガド6との関わりなど、ファンはもちろん初めて彼を知る人も興味深い、須田景凪の成り立ちに迫るインタビュー!
TEXT:北野啓太郎
須田景凪(以下、須田):素直に嬉しいですね。自分の楽曲がテレビで流れる機会がまず少ないので、単純に流れるだけでも嬉しいですし、POWER PUSH! として流していただけるのは嬉しいです。
須田:後者ですね。最近、バルーン名義の曲は出せていないんですけど、二つの名義で活動しております。
須田:バルーンの楽曲は、すべてボーカロイド(音声合成)で作っています。投稿していたニコニコ動画は二次創作が盛んな文化で、「歌ってみた」だったり、「演奏してみた」だったり、色んな人が色んな解釈で歌ったりするんですね。つまり、誰が歌っても良い曲になるというか、言いたいことがあってもなるべく簡単な言葉に凝縮して発表したいな、っていうのがバルーンの楽曲です。それに対して須田景凪の楽曲は、ボーカロイドではなく僕が歌っています。また、テーマが難しいものであっても、多少難解なままで出したいという意図があります。「誰が歌っても良い曲」というより、「自分の声が表現の一番正解であるように」作っていますね。
須田:いえ、今回のアルバム「teeter」で初めて生音を入れました。前作の須田景凪名義のアルバム「Quote」は、ボーカル以外は全部打ち込みです。
須田:パレイドリアを作る1〜2か月前、引っ越しをしようと思って色々内見していたんですね。そんな時、そこでの暮らしを想像しながら作った曲なんです。きっかけはそういう感じです。
須田:そうです。曲が浮かんだその部屋で、今、暮らしています。
須田:僕のこれまでの曲の中で、BPM(テンポ)が一番速くて。歌詞の展開とか、メロディーの展開とか、言葉数も多くて、めまぐるしい曲なんです。ただ、速いだけだと抜けてしまうので、より印象的になるよう、メロディーや歌詞の語呂の良さに工夫して制作しました。
須田:僕はひとりっ子で、幼い頃はひとり遊びをよくしていたのですが、そのとき「カーテンのシワが人の顔に見える」というのが、めちゃめちゃあったんです。先程お話した部屋の内見の時に、そこでの生活を想像しながらそのことを思い出して。「自分の暮らしの原点がパレイドリアという現象につながるな」と思い、最終的にそれを曲名にしました。
須田:1番の作りと2番の作りが結構大きく違っています。1番はギミックが多めで、2番はダンスが多め。バラで見ると別の作品のように見えると思います。それぞれの違いを意識したり、1番と2番を分けて見たりすると面白いかもしれないですね。
須田:色んなMV作家さんの映像を見ていて、そのときに水曜日のカンパネラさんのMVを見てすごくかっこいいなと思い、制作をお願いしました。
須田:はい、初めての実写です。
須田:めちゃめちゃ緊張しましたね。すべてが初めてだったので過去のMVとは比較できないのですが、実写じゃないとできない生々しさを感じました。特に今回はコンテンポラリーダンサーの水村里奈さんに踊って頂き、目の前で自分の音楽を踊りで表現してもらう、という初めての体験もしました。水村さんが踊っているのを僕は目の前でずっと見ていたんですけど、肉体的なエネルギーをすごく感じましたね。あれは間違いなく実写じゃないとできないと思うので、新しく開けたものが作れたと思います。
須田:モチーフとしては結構使っているかもしれないですね。アボガド6さんがMVを手がけた「アマドール」に関して言うと、「コップに水が溜まる、倒れてしまう」という演出は、「感情がいっぱいになって、こぼれてしまう」みたいなのを連想して使っています。
須田:いや、僕が一方的にアボガド6さんのファンだったんです。僕は2013年からバルーン名義で活動しているんですけど、アボガド6さんは多分1〜2年早くからMVとかを作って投稿されていて。僕がバルーンを始めて半年くらい経った頃、「アボガド6さんが僕の歌を知ってくれている」というのを風の噂で聞きまして。めちゃめちゃ嬉しくて、TwitterのDMで「MVを作ってくれませんか?お願いします!」みたいなメッセージを送らせてもらったんです。最初に絵コンテというか、キャラクター案をくれました。それがすごくかっこよくて、「次はキャラクター案の曲を書きたい」となってしまって。そういうのを繰り返しながら、かれこれ5年続いている感じですね。
須田:そうですね。
須田:「パレイドリア」の世界観から引っ張ってきた要素が多いかもしれないですね。右半分の白い部分はカーテンをイメージしています。元々はもっとズームアウトしていて、部屋だったり、家具だったり、カーテンだったりがもっとリアルな質感で、そういうタッチでした。アボガド6さんとSkypeで画面共有をしながら、「ここの線をこうしてみて」とか、「この家具を一旦どかしてみて」とかやっていて、最終的にこれが完成しました。
須田:そうですね。「teeter」は「ふらふら歩く」という意味なんですけど、カーテンもそうだし、吊るした花もそうだし、動きを想像できるものモチーフにしています。
須田:去年、2018年1月に「Quote」という須田景凪での最初のアルバムを出して、3月に初めてのワンマンライブをして、次に7月に「Dolly」っていう曲を出したんですけど。その後、色々と考えることがあったんです。僕はこれまで全部パソコンで曲を作ってきて、音も言葉も内側を向いていました。でも、ライブでは目の前にお客さんがいっぱいいて、そこで音楽的な会話を初めて直接して、「これまで内側に向いていたものを外側に向けたいな」という気持ちが芽生えました。ちょっと変えていきたいな、と。
須田:「Dolly」の前に「farce」を作ったのですが、「Dolly」は「前向きになりたい」というテーマに対して、「farce」は「茶番」という意味で前を向いてみたいという気持ちを俯瞰した曲なんです。僕には、どっちの感情もあって、そのあいだで自分がどっちつかずの場所にいる状態がありました。アルバム「teeter」に収録されている、「farce」も「Dolly」も、「mock」も「パレイドリア」も、「レソロジカ」も、二面性というか繋がりがある曲です。そのあいだに自分がいる状態が、teeter(ふらふら歩いている)という状態に近いなと思って、アルバムタイトルにしました。
須田:そうですね。めまぐるしい感じでした。
須田:前作の「Quote」はすべてパソコンで作っていて、それはバルーンのときと一緒だったので、そういう意味ではあまり変わらなかったのですが、今回の「teeter」は、全曲に生音を入れています。作りながら芽生えた感情ですが、今までの曲は「自分がこれ」と決めたらそれ以外に答えはありませんでしたが、今回は「こういうノリにしてみたらどう?」「こういうフレーズにしてみたらどう?」と、サポートミュージシャンなど色んな人からアイデアを交換しながら制作しました。他の人の解釈が入った状態というか、こういうのは今まで5年間、バルーンでも須田景凪でも無かった感情ですので、それはすごく新しい気持ちになりましたね。
須田:このアルバムだけに限った話ではなく、ずっと思っている目標にはなっちゃうんですけど、どんな形であれ、人に寄り添っているというか、日常に溶け込んでいる音楽でありたいと思っています。よく行く店で流れているでもいいですし、仲良い友達が聴いているでもいいんですけど、そういう音楽でありたいと思っていて。色んな音楽を聴いて、取捨選択をして、「その結果、その人達の生活に僕の音楽が溶け込めたら最高だな」と思います。
須田:何回も見て楽しめるMVだと思うので、繰り返し見ていただければ嬉しいです!
ポルノグラフィティ「ジョバイロ」「サウダージ」 ![]() |
ほんと一番最初のルーツになっちゃうんですけど、ポルノグラフィティさんが大好きで、特に「ジョバイロ」とか「サウダージ」とかが僕のルーツになっていると思います。 |
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