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Selfish / 小袋成彬

2018年4月のアーティスト

Artist

Selfish / 小袋成彬

Profile

1991 年 4 月 30 日生まれ。

R&B ユニット”N.O.R.K.”のボーカルとして活躍。音楽レーベル Tokyo Recordings を設立し、水曜日のカンパネラへの歌詞提供のほか、adieu など様々なアーティストのプロデュースを手掛ける。

2016 年、宇多田ヒカルのアルバム「Fantôme」収録曲「ともだち with 小袋成彬」にゲストボーカルとして参加。

最新ワークスは映画「ナラタージュ」主題歌を歌う adieu のデビューシングル。(アレンジおよびプロデュース) 伸びやかな声と挑戦的なサウンドデザイン、文藝の薫り高き歌詞が特徴。2018 年 4 月 25 日、デビューアルバム「分離派の夏」を携え、いよいよソロアーティストとしてデビュー。

オフィシャルサイト

Power Push! Interview


これまで編曲家として数多くのアーティティストに楽曲を提供してきた小袋成彬が1stアルバム『分離派の夏』をリリース。その中に収録される「Selfish」が4月のPOWERPUSH!に決定した。宇多田ヒカルが「この人の声を世に出す手助けをしなきゃいけない」という使命感に駆られ、プロデュースを手掛けたことでも話題となっている今作では、静謐なサウンドスケープと独創的なメロディラインにのせて、内省的な事柄が極めて文学的な言葉で綴られている。なぜ、小袋成彬は自分自身を表現せずにはいられないのか、話を聞いた。

PHOTO:AZUSA TAKADA TEXT:RIE HADA

編曲者からシンガーソングライターへ

―もともとレーベルオーナーとして裏方として活動されていたそうですけども、シンガーソングライターとして活動してこうと思ったのはどうしてだったんですか?

それまでは作曲と編曲のお仕事をメインにやってたんですけど、そういう編曲作業が自分にとって意味があるものなのかわからなくなってしまったんです。

―それはいつぐらいから抱いていたんですか?

2016年ぐらいなので2年ちょっと前ぐらいからですね。

―なぜ編曲のお仕事が、意味のあるものかわからなくなったんでしょう?

アルバムを1枚プロデュースする中で自分がコントロールできるものと、できないものがはっきりしてきたんですよね。そういう意味で、僕はコントロールしたいほうなんですよ。A&Rとかクライアントの意見をあんまり聞き入れたくないんです。それが本当にノイズのように感じてきて……それが大きいですね。

―時期的には宇多田ヒカルさんのアルバム『Fantôme』(2016年9月)に収録されている「ともだち with 小袋成彬」でボーカリストとして参加されたタイミングとも重なりますけど、それが決断のきっかけになった部分もありますか?

ありません。

―そうやって編曲者としてのお仕事に対する違和感を抱きつつある中で、シンガーソングライターになる決意をする、最終的な後押しになったものは何でしたか?

(今回のアルバムに収録されている)『Daydreaming in Guam』を作ったときですね。その曲に自分が泣かされてしまったんですよ。

―泣かされてしまった?なぜでしょう?

わからないです。わからないから曲にしたんだと思います。

―歌詞の舞台はグアムだと思いますけど、実体験ですか?それともフィクション?

答えたくないです。

―でもこの曲で「自分自身は歌いたい人間なんだ」と気づかされたんですね。

歌いたいんじゃなくて、歌わざるをえないんじゃないんかって思いましたね。

小袋成彬を浮き彫りにする『分離派の夏』という作品

―今回のアルバムでは、比較的スローテンポな楽曲が多いですけど、いまの自分が聴いているものとか好みが反映されたものなんですか?

いや、それはないですね。僕は激しい音楽も聴きますし、アイアン・メイデンとかも大好きですから。「こういう曲を作りたい」っていう発想で音楽を作っていないので、ただ自然にこうなっただけです。

―歌詞のほうはどうですか?どの曲も描かれる景色とか、手触り、匂いまで連想できるような文学的な歌詞だと思いますけど。影響を受けた文学作品はあるんですか?

わかりません。最近読んでるのは祖母から年始にもらった種田山頭火(大正から昭和に活躍した俳人)の伝記です。俳句は日本語という曖昧な言語に特化して生まれた素晴らしい文化ですよね。

―歌詞を書くときに、小袋さんが大切にしてることは何でしょう?

そもそも音楽の歌詞を書くということは、エッセイなり、日記なり、言葉では伝わらないものを書かないと意味がないじゃないですか。例えば、悲しいと感じる出来事があって、それは「悲しい」というひとつの単語でも伝わるんだけども、情景描写や心情描写、あるいは人物の関係を紡いでいくことで、ただの「悲しい」だけじゃなくなっていく。そこに旋律とリズム、メロディ、コーラスがのって、さらにふくよかになるので。僕の場合、そうじゃないと、言葉を音楽にのせる意味がないと思ってます。

―編曲者として活動をしていた時にも歌詞は書いていましたけど、自分で歌うとなると、歌詞への向き合い方は違いましたか?

誰かに歌ってもらうときは、そこに自分の精神的な闘争みたいなものを求めたらダメなので。その中で歌詞を書くのが難しかったんですよね。

―精神的な闘争?

たとえば、親に言われたことが自分の中で崩れていく瞬間があるじゃないですか。僕の場合だと、「人に迷惑をかけるな」っていう教えがありましたけど、ある日、それが間違いだっていうことに気づいたんですよ。生きてる時点でもう人に迷惑がかかってるし。むしろ感謝をすることのほうが大事なんじゃないのかって気づく。教わってきたことが自分なりに解釈されることで、そこに精神的な闘争なり、葛藤なり、信仰心の崩壊みたいなものが生まれるんですよね。そこが音楽になりやすくもあり、自分にとって大事なターニングポイントになりうる場合が多いんです。

―自分の心の中でビックバンみたいなものが起こるわけですよね。

それが自分の真実ですよね。事実ではなくて。

―つまり、その精神的な闘争を経て、真実を見つけたときが、小袋さんが歌を作り出す原動力になっているということですか?

そうですね。

リード曲「Selfish」MVで描かれた石田悠介監督の世界観

―リード曲の「Selfish」は、繊細なハーモニーとドラマチックなストリングスの演奏と共に進行するとても美しい曲ですね。

これはカノン進行の曲を作ろうと思って、ギターから作った曲ですね。

―曲の中では「Am I Selfish?」という言葉がリフレインしていますけど、Selfish=自分本位というテーマで書こうと思ったのは?

うーん…何でしょうね。

―この曲の根底にあるのは、伝えたいことが伝わらないもどかしさだったり、結局は伝わらない諦めみたいなものかな、と思いましたが。

言葉にできないんですよね。「何を作ろう」っていうのはないので。なんとなくメロディを歌ってたら、出だしの“過ぎた車の静けさ”っていうのがパっと浮かんできたんですよね。それが自分の中で出てきたグルーヴと、消化できてなかった思い出とがリンクした瞬間なんでしょうね。

―ミュージックビデオでは「自動車の事故」がきっかけでストーリーが展開していきますけど、このあたりは小袋さんのアイディアなんですか?

これは(監督の)石田さんです。石田さんに聞いてください。僕は石田さんの世界観を表現することに徹しようと思ったんですよね。

―映像はプロに任せたほうがいいと。

そう、僕なんかよりも、よっぽど映像を見てる人のほうが理解してるわけですからね。石田さんが僕の曲を使って表現したいことを、僕は一生懸命サポートするべきだと思ったんです。

―ミュージックビデオでは、自転車の事故に端を発して、まるで他人事のように傍観する人もいれば、慌てて駆け寄る人もいる。それが「Selfish」で描いた内省的な表現とリンクしている部分はあると思いますか?

僕が歌ってるときに、あの映像のような景色は全く思い浮かんでないので、わからないです。

―そのあたりの理由を石田さんには聞きましたか?

それを聞くのは野暮じゃないですか。石田さんには、この歌詞はこういう意味でこうだっていうのは制作段階では伝えましたけど。

―石田さんに説明したようなことを、ここで話していただけませんか?

いや、メディアでは絶対に言わないようにしてます。

―その言葉が小袋さんの音楽に対する誠意ですね。

そうですね。

タイトル『分離派の夏』について

―アルバムを総称するタイトルとして「分離派の夏」という言葉が出てきたのは?

言えないですね。明確な理由があるんですけど。

―ここは引き下がれないので、ちょっと詳しく突っ込みます(笑)。まずアルバムには夏の曲が多いですよね。

そうですね。「Summer Reminds Me」とか「夏の夢」とか。なんだろう……野球部だったからじゃないですかね。甲子園も夏に始まり、夏に終わりますから。僕が思う夏っていうのは幹線道路沿いのコンビニで炎天下に晒された夏っていう感じですね。夏のビーチではないんです。

―ええ、どこか湿度が高い感じがするし、生活の中にある夏ですよね。

うん。蒸し蒸ししてると思います。

―そういう意味で「夏」というのが、アルバムの中で特別な季節になっている。で、「分離派」っていうのは、つまり小袋さん自身のことですよね?

そうだと思います。

―小袋さん自身、まずアーティストとしての出発点として、編曲家である自分と表現したいことの間に「分離」があったし、アルバムの曲を作っていく中で自分自身の真実と現実の間の「分離」もあった。そういう作品だからこそ、この言葉なのかなと思いましたが。

じゃあそれで。僕はタイトルをつけるのが苦手で、曲名も最後までつかないんですよ。そこにあんまり意味がないと思ってたので。だから、けっこう(アルバムのタイトルも)悩んだんです。それで制限をかけたほうがいいなと思って、まずアルバムのジャケットデザインを思い浮べたんです。たとえば、明朝体で5文字の日本語を入れようって。それは三島由紀夫の『春の雪』を読んで、岩波(文庫)のあの書体がすごくよかったのと、「の」っていう字の滑らかさを入れたかったからなんですけど。例えば「遊離の川辺」とか。でも、なんか違うなと思って、最終的に「分離派の夏」になりましたね。

―この作品ができたことで、シンガーソングライターとしての小袋成彬がこれからどうなっていくか、見えてきたものはありましたか?

どうなりたいっていうのは一切ないんですけど。どうあるべきかはあるんです。これから表現者として生きていく道を選んだわけですから、いろいろな葛藤をどう消化するかですよね。例えば、このアルバムの売り上げが悪かったら、次の作品では(自分の頭の中で)鳴ってる音が十分に出せないかもしれないし。逆に言えば、すごくみんなに受け入れられたら、自分の中で受け入れられそうな音楽がわかっちゃうかもしれない。まだ、何もわからないんですけど、ただ、自分のスタンスとしては、真実を描くことを大切にしたいんです。

―なるほど。精神的な闘争を経て得た、真実ですよね。

そう、その真実を描けなくなってしまったらもう終わりですから。それさえ失わなければいい。あとは静かに音楽をやれれば幸せです。

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