“あなたの側で、生きてる音楽。”をコンセプトに、スペースシャワーTVがトップミュージシャンと送るプレミアムライブ番組『SPACE SHOWER TV “LIVE with YOU”』。2012年の放送スタート以来、J-POP/ROCKファン垂涎ものの顔ぶれが出演してきたこの完全無料招待制の人気プログラムに、今秋デビュー10周年を迎える秦 基博が満を持して登場した。
普段の公演ではアリーナやホールを満杯にしているミュージシャンのライヴを、まったく異なる小さなライヴハウスで体感できるのが『SPACE SHOWER TV “LIVE with YOU”』の特徴であり、大きな魅力だ。今回の会場は、東京は恵比寿のザ・ガーデンルームで、約22倍(!)の倍率を勝ち抜いて当選したラッキーなファン300人が招待された。これには秦本人も驚いたようで、MCで「すごい強運。人生はプラマイゼロなので、帰り道に気をつけて」と語り、爆笑を誘う場面も。
昨年12月にリリースされた3年ぶりのオリジナル・アルバム『青の光景』を、自身初となる全面セルフ・プロデュース&アレンジで作り上げた秦 基博。あらきゆうこ(Dr)、鈴木正人(B)、皆川真人(Key)、弓木英梨乃(G)という実力者からなるバンドをバックにステージに登場した彼は、同アルバムからの「ダイアローグ・モノローグ」で、しっとりとライヴをスタートさせた。
それにしても、近い。秦とバンド・メンバーが寄り添うようにして、まさに目と鼻の先で演奏しているさまは、スタジオでのセッションを観ているかのようで、かなりのレア感。オーディエンスからも、ため息にも似た感激の声が上がる。この日のセットリストは、『青の光景』収録曲を軸に秦 基博の最新モードを伝えつつ、過去の作品群から代表曲を選りすぐった濃密な構成。2曲目「ROUTES」で伸びやかなメロディを飛翔するような歌声で聴かせた秦は、続く「トレモロ降る夜」では弾むようなビートと流麗なベース・ラインに乗せて、ファルセットを交えた巧みなヴォーカルを披露。バンド感たっぷりのグルーヴィーなサウンドに、フロアの温度が一気に上昇した。
弓木のギター・ソロも光り、ロックのようなダイナミズムを生んだ「鱗(うろこ)」、ピアノとアコースティック・ギターのみで演奏され、声の微妙なかすれ具合もリアルな体温を伝えていたバラード「水彩の月」、まるでラップのような早口ヴォーカルと観客のハンド・クラップが鮮やかに共鳴した「トラノコ」など、曲を重ねるごとに秦とバンド、フロアの一体感がどんどん増していく。
開放感に満ちた陽性アンセム「グッバイ・アイザック」で、さらなる高みへ達すると、「Q & A」では一転、男の色気がにじむ艶やかな世界が構築される。そして、明快でジョイフルな「あそぶおとな」で大きなシング・アロングを巻き起こして、本編が終了した。
迎えたアンコール。新曲「スミレ」は本編でのライヴ初お披露目の興奮も醒めやまぬうちに、なんとミュージックビデオでお馴染みの“スミレちゃんダンサーズ”と“秦少年”がサプライズ登場しての再演。みんなで振り付けをして楽しく親密な場を共有した後、対照的に月明かりでのストリート・ライヴのような「ひまわりの約束」の弾き語りで、淡く儚い余韻を残して終幕を迎えた。
「ひまわりの約束」の演奏前、秦が「LIVE with YOUならでは」という説明をしたのだが、実はその収録方法には「LIVE with YOU」初の試みがあった。それはきっと完成した映像で確かめるのが良いに違いない。ステージや会場に施される美術装飾の類が一切無く、背後の壁もむき出しのまま実にプレーンな舞台で繰り広げられた今回のライブ。心を震わす音楽と美しい照明を大胆かつ繊細なカメラワークが捉えた行方を見届けよう。
このライブのオンエアは、3月26日(土)20:00〜21:00。“あなたの側”にいる秦 基博を、ぜひ感じていただきたい。
撮影:河本悠貴/テキスト:鈴木宏和
◆セットリスト
M01. ダイアローグ・モノローグ
M02. ROUTES
M03. トレモロ降る夜
M04. 鱗(うろこ)
M05. 水彩の月
M06. 聖なる夜の贈り物
M07. トラノコ
M08. グッバイ・アイザック
M09. Q & A
M10. スミレ
M11. あそぶおとな
EN1. スミレ
EN2. ひまわりの約束
(番組O.A.楽曲は未定です)